英語習得とアイデンティティ ①

言語習得・英語教育

Smileに対してバイリンガル育児を始めたのは、Smileが1歳7ヶ月のとき。

Smileからの反応がないときは、こちらから英語で語りかけをしたり、英語の絵本をたくさん読んできました。お喋りが上手になってきてからは、日本語とのバランスを気をつけるようになりましたが、いつも頭の片隅から離れないのは、「この先、Smileのアイデンティティはどう移り変わっていくのか」ということです。

今はわたしとの会話が英語でも抵抗を感じていないですが、この先、外の世界に出て今とは違う複数のコミュニティに所属したとき、今英語に対して抱いている感情、あるいはSmileのアイデンティティはどのように変移するのか、興味深くもあり不安でもあります。

英語ママさんがご自身のブログで紹介してくださった記事によると、幼少期に英語に深く触れ、バイリンガルに育った子どもでも、思春期に入り、これまでとは異なるコミュニティに所属するうちに英語に対する興味を失うこともあるのだそうです。

アイデンティティ研究で著名な研究者、Bonny Norton Peirce氏は、第二言語習得理論を語るときは、学習者には複雑に絡み合うアイデンティティがあるということを理解しなければならない。そして同時に、学習者を取り巻く(時には不公平な*)社会構造も絡めて考えなければならないと言っています。

*Norton Peirce氏は、北米に移住し、不公平な待遇を受けていたり、不平等な立場に置かれている学習者のケースを重点的に見ています。

Identity refers to how people understand their relationship to the world, how that relationship is constructed across time and space, and how people understand their possibilities for the futures.

アイデンティティとは、自分と社会との関わりをどう受け止めるか、その関係が時と空間を超えてどのように構築されているか、そして未来に対して自分の可能性をどう見るか、ということを指す。

(Norton, B. (1997). Language, identity, and the ownership of English. TESOL Quarterly, 31(3), pp. 409-429. )

つまり、アイデンティティとは、「自分が何者か」ということではなく、「自分がどうなりたいか(どうありたいか)」ということで、固定された(fixed)ものではなく、アイデンティティの変移に伴い、言語習得も影響を受けるということです。

英語ママさんの紹介してくれた記事のケースで言うと、「思春期」、そして「友達とのつながりが重要」という環境では、「バイリンガルである自分(Who you are)」よりも、「皆と同じになりたい(Who you want to be)」という方が重要だったということになります。

Smileがこの先、自分のことをどのように捉え、どうなりたいと思うのか、まだまだ想像もつきませんが、記事にもあるように、どんな状況になってもSmileに寄り添い、出来る限り手助けし、見守っていきたいと思います。

(大学院時代の研究論文では、20代前半で渡米し、4年に渡りアメリカの教育を受けた青年のアイデンティティの変移について書きました。英語が大好きで渡米した彼が、異なるコミュニティに属するうちに、アイデンティティも移り変わり、4年後、英語をどのように捉え、(ときには)英語と距離を置くようになったのか、『英語習得とアイデンティティ②』で書きたいと思います。)

コメント

  1. Juki より:

    Smile0922さん、こんばんは。
    いつも楽しく拝読させて頂いております。
    コメント残せたんですね…初めて知りました。

    私も大学時代からアイデンティティに関してはとても興味をもち(理由は、日本を離れる事で、自分は多面的だと感じた為)、gender identityの視点からはかなり読み漁りました。

    これだ!という答えはなく、未だにさまよっています。smile0922さんの視点をもっと知りたいです!
    楽しみにしてます。

    • MarikoTakeda より:

      Jukiさん、コメントありがとうございます〜!わたしもブログ更新、いつも楽しみにしてます〜。Gender identityを勉強されたんですね!わたしも少しだけ授業で読みましたが、難しくてなかなか理解できなかった記憶があります・・・。

      わたしも全く同じ!答えが見つからず、修士論文を書き終えたあと、「研究って何のためにやるんだろう」と分からなくなってしまい、博士を断念して帰国してしまったという・・・T_T

  2. Camay より:

    娘の場合、
    「みんなと同じがいい!」
    これを主張し始めたのは小学1年生からです。ブログにも経過を書いているのですが、小学生の間はお友達の前ではずっと英語を封印していましたよ。
    そんな経験をして来た結果が、今の英語への興味のなさを物語っているのかなと思っています…

    • MarikoTakeda より:

      Camayさん、コメントありがとうございます!そうなんです。わたしも一番不安なのが、Smileが小学校に入ってからなんです。

      Cannonちゃんのようにネイティブのような英語でも、英語と距離を持ってしまうことがあるんですね・・・。コミュニティへの所属感というのは、非常に大きな影響力なんだなぁと改めて思います。

  3. […] 『英語習得とアイデンティティ①』では、英語ママさんが紹介してくださった記事を元に、アイデンティティについて少し触れました。国際結婚した家庭でバイリンガルに育った子どもでも、思春期になると英語に対して拒否感を示すことがある、という内容でした。 […]

タイトルとURLをコピーしました