英語が苦手な親は、発音が子どもに移るので注意が必要か?
という件。
これに関しては、日本語に触れさせずにずっと英語で話しかけるというのはリスクがありますが、信用できる情報筋から「親は発音に気にせず話しかけて大丈夫!」というように出ているし、わたしも同じ意見です。
でも英語育児関連の情報で、
英語ネイティヴの発音を中心に聞かせていれば、「日本語アクセントの英語にはならない」、そして「親の語りかけは注意が必要」という内容のものを目にしたので、今日はその件について。
英語の取組みをする際に、親御さんが自身の英語力や発音を気にされるのはもちろん理解できます。
英語で話しかけたりしてはいけないということではないけれど、語りかけに注意が必要というのも同意です。子どもの第一言語が日本語である場合は、日本語に触れさせずに英語に偏るのも危険。
わたしも仮に、フランス語を子どもに習わせていたとして、全くフランス語を話せないわたしが
「片言で話しかけていいのかしら?」とか「フランス語の絵本読んでも平気かしら?」とかちょっと頭をかすめるかもしれません。
でもだからと言って、その言語で話しかけてみたり(挨拶の練習程度)、絵本を読んだりしてはいけないということではない。
語りかけはインプットの一つ
英語の語りかけは、音源のかけ流しや絵本読み聞かせや歌のように、インプットの一つに過ぎない。
語りかけをしないのであれば、他の方法でインタラクティブなインプットがあれば良いというだけなのですが、
英語話者がどんどん増えていて、英語の使い手も多様性に富んでいる現代の社会で、幼児期は英語ネイティヴの英語を中心に聞かせれば、日本語アクセントの英語にはならないという意見が、
親御さんからではなく、情報を発信する立場から出ているのはどうなんだろう?言語習得に関する背景知識がなければ、影響力大。
「日本語アクセントの英語は悪い」
「ネイティヴのような発音が良い」
など、発音で英語力を評価する風潮が広まり、排他的な考え方にならないだろうか?と思ってしまいます。
もちろん、正しい発音は知っていた方がコミュニケーションを取りやすくなるし、コミュニケーションを取るのが難しいほどであれば発音矯正なんかも必要かもしれません。
アクセントのない英語について
でも日本語のアクセントがない英語を話すことが果たしてどれだけ重要なのか。
そもそも英語ネイティヴ発音って何なんでしょう?
アメリカ英語やイギリス英語ひとつ取っても、いろんなアクセントがありますよね。
幼児期は耳を育てるために、英語ネイティヴの発音を聞かせたい!と親御さん自身が感じるのは自然なことだし、もちろん理解できます。
不定期にでも英語ネイティヴの方と交流する機会があるのであれば、そういう場で英語に触れるというのもいいし、
そういう場がなければ、DVDやCDなどの動画でネイティヴの発音を入れるのもいい。
あるいは学習者や子どもが自ら「発音を良くしたい!」と思うのは良いと思うんです。
わたし自身、ハワイに住んでいた時は、現地の人のハワイ訛りが心地良くて、密かに真似た時期もあります。(そのハワイ訛りですらも、アメリカ本土出身の方から「ハワイ訛りが移るから現地の人とあまり絡まない方がいい」と言われるくらい、英語ネイティヴの英語にも幅があるということですよね)
でも、少しでも影響力のある立場で「幼児期は英語ネイティヴの発音を聞かせるべき!」と発信したり、日本語アクセントの英語はよくないという印象を持つような発信をしたりするのは混乱を招くのではないかな?と思います。
質の高いインプットの必要性
もちろん、英語ネイティヴの発する音だったり、使う幅広い英語表現だったり、そういったものに触れるのも大事な要素の一つ。
第二言語習得の分野で著名な言語学者オルテガ氏によると、質の高いインプットに触れさせることは確かに言語を習得する上で重要だそうです。
ちなみに質の高いインプットというのは、文法的にも誤りのない文だったり、子どもが理解できるレベルのインプットだったりを指し、発音に限りません。
つまり、お母さんやお父さんがご家庭で、日常的に英語の絵本を読み聞かせたり、英語で簡単に話しかけることは、どちらかというと「インプットの質」ではなくインプットの量を増やしていることになります。
それに加えて、英語サークル、英語教室やオンラインレッスンなどで英語に触れさせたり、英語の音源を掛け流ししたりすることで、インプットの質を高める。(レッスンや掛け流しの頻度が高いのであれば、インプットの量も増えるということにもなります)
子どもは色んな英語に触れることで、インプットを整理して取り込んでいくものだと思っています。
それに加えて、身近な存在で英語を使う姿を見せるというのも、多様性への寛容さを育てていくんじゃないかな、と。
そういう意味でも、もしご自身の発音や英語力に自信がなくても、自分の英語を子どもに聞かせてはいけないということではないし、
英語を使う姿を積極的に見せることは子どものバイカルチュラルな姿勢も育てていくのではないでしょうか。
…a number of environmental (e.g. opportunities for exposure and use of high-quality L2 input and amount and quality of L1 use) and socio-affective factors (e.g. motivation, L2 instruction and overall education) may mutually interact and become important predictors of success at earlier as well as later starting ages.
「多くの環境的要因(英語に触れる機会、質の高い第2言語に触れる機会とその量、母語の使用状況)や、社会的要因(モチベーション、第2言語による指導、全般的な教育)は、相互的に影響しあうと考えられる。そして、後期(4歳以降)と同様に、早期(4歳以前)に第2言語に触れる上で、成功するかどうかを見極める重要な予測判断材料となる」
(参考文献:Ortega, L (2009) Understanding Second Language Acquisition. London: Hodder Education.)
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